前の記事まで、私たちは、体の内側にあるリズム(心拍、呼吸、体内時計、ストレスによる変化)を見てきました。
では、こうした体のリズムは、周囲からの周期的な刺激、例えば、音、光、振動などによっても、変わることがあるのでしょうか。
ここで関わってくるのが、「共鳴」と「同調」という、2つの現象です。
振動が響き合う。共鳴
「共鳴」という言葉を聞いたことがある人は多いと思います。
物理学における共鳴とは、ある物体に、その物体が振動しやすい周波数に近い振動が加わると、振動が大きくなる現象のことです。
これをわかりやすく確かめられる実験に、音叉(おんさ)を使ったものがあります。
同じ音程に調整された2つの音叉を、少し離して置きます。片方の音叉を叩いて鳴らすと、直接触れていないはずのもう片方の音叉も、しばらくすると鳴り始めます。
これは、最初に鳴らした音叉の振動が空気を伝わり、もう片方の音叉に届いたときに起こります。
音叉には、それぞれ「振動しやすい周波数」があります。これを「固有振動数」といいます。
届いた振動の周波数が、もう片方の音叉の固有振動数に近いほど、振動は大きくなりやすいということです。
つまり共鳴とは、
外からの振動と、受け取る側がもともと振動しやすい周期が合うことで、振動が大きくなる現象です。
共鳴は、ものが周囲の振動と関わり合う、代表的な現象のひとつです。
リズムは、揃っていく。同調
もうひとつ、興味深い現象があります。
「同調」と呼ばれる現象です。
有名な例に、振り子時計があります。
もともと別々のタイミングで揺れていた2つの振り子時計を、同じ壁などを通して影響し合う状態に置くと、時間が経つにつれて、2つの振り子のタイミングが近づいていくことがあります。
最初はバラバラだったリズムが、周囲との関わりの中で、少しずつ揃っていく。
これが、同調のイメージです。
共鳴が、
「ある周波数で振動が大きくなること」
だとすれば、
同調は、
「外からのリズムの影響を受けて、自分のリズムが合うように変化していくこと」を指します。
私たちの体にも、同調は起きている
実は、私たちの体にも、わかりやすい同調の例があります。
それが、これまで見てきた「体内時計」です。
私たちの体内時計は、およそ24時間のリズムを持っています。
でも、そのリズムが完全に自分の中だけで動いているわけではなく、朝に光を浴びることで、体は「今は朝」という情報を受け取り、体内時計を実際の一日のサイクルに合わせて調整しています。
つまり、
周囲の周期的な刺激が、体の内側のリズムに影響を与えている
ということです。
これは、音叉の共鳴とは違う現象ですが、周囲のリズムと体のリズムが関わり合っている、わかりやすい例です。
体は、周囲の刺激を受け取っている
では、音や振動についてはどうでしょうか。
私たちの体は、音や光、振動など、周囲から届くさまざまな刺激を受け取っています。
たとえば、音は空気の振動です。
その振動が耳に届くと、鼓膜が実際に振動します。その情報は神経を通じて脳へ伝わり、体の反応へとつながっていきます。
音楽を聴いて気持ちが落ち着いたり、呼吸や心拍に変化が現れたりすることがあるのも、私たちの体が周囲からの刺激を受け取り、それに反応しているからです。
一方で、体内時計のように、周囲の周期に合わせて体のリズムそのものが調整される場合もあります。
つまり人間の体では、
周囲から受けた刺激に対して、さまざまな形で反応が起きている
ということです。
共鳴や同調は、そうした「周囲と体の関わり」を考えるうえで、ひとつの手がかりになります。
共鳴と同調は、似ているけれど違う
整理すると、こうなります。
共鳴は、
振動しやすい周波数に近い刺激を受けて、振動が大きくなること。
同調は、
外からのリズムに影響されて、自分のリズムが合うように変化していくこと。
似ているようですが、起きていることは少し違います。
ただ、どちらにも共通しているのは、
外からの周期的な刺激と、それを受け取る側との間には関係がある
ということです。
それでも、まだわかっていないことは多い
私たちの体は、とても複雑です。
音、光、振動などを受けたときに、体のどこで、どのような変化が起こり、それがどのように心拍や呼吸、気分などにつながっていくのか。そのすべては、まだ解明されていないようです。
音や光、振動が心身の状態に影響を与えることについては、これまで多くの研究が行われていて、医療の分野でも、音楽療法や、特定の周波数を用いた治療など、音や振動を活用した取り組みが、研究・実践されて続けています。
まとめ:この記事でわかったこと
- 共鳴とは、外から受け取った振動の周波数が、物体の振動しやすい周波数に近いほど、大きく振動する現象である
- 音叉を使うと、共鳴という現象をわかりやすく見ることができる
- 同調とは、もともと別々だったリズムが、周囲との関わりの中で少しずつ揃っていく現象
- 私たちの体内時計も、光という周囲からの刺激を受けて調整されている
- 私たちの体は、音や光、振動など周囲からの刺激を受け取り、それに応じてさまざまな反応をしている
- 共鳴や同調は、周囲のリズムと体のリズムとの関係を考える手がかりになる
- 人間の体は複雑なため、その反応のすべてを単純にひとつの仕組みで説明できない
私たちの体は、周囲の環境と無関係に働いているわけではなく、光や音、振動などさまざまな刺激を受けながら、状態を変化させています。
では、そうした変化の中で、体はどのようにバランスを保ち、元の状態へ戻ろうとしているのでしょうか。
次の記事では、体に備わっている「整えようとするしくみ」について見ていきます。

